ぬくもりをもう一度
手を繋いだまま、

俺たちは九段下駅のホームへと

降りてきた。


上りホームと下りホームが

別れた構造である駅の、

下りホームに俺たちは立っていた。


こっちの電車には香澄が、

反対側の電車には俺が乗車する。


階段で別れることが出来ず、

香澄が乗るまで見送ることにしたのだ。


その直前までこの手は絶対に離さない、

そう思ってギュッと握り締める。


それに応えるように、

香澄もぎゅっと握り返してきた。


言葉を交わさない。


ただ、ポケットの中の手だけが

俺たちの気持ちを行き来させていた。






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