ぬくもりをもう一度
俺にはどうしても

香澄と行きたい場所があった。


九段下駅周辺でも十分に

素敵な街並みが

広がっているのだけれど、

心に引っかかる出来事が

あった以上、

クリスマスという特別な日に

この街で過ごす気持ちにはなれない。


学生の頃からずっと、

いつかは記念日に2人で行こうと

思っていた。


なのに今以上に不器用だった俺は、

その記念日を待たずして

香澄との距離ができてしまった。


だから、今日はその時の

リベンジでもあるのだ。


地下鉄に乗ることおよそ20分。


その最寄り駅へ到着すると、

俺たちは手を繋いだまま

地上へ続く階段を上る。


凍てつく寒さに身を震わせながら

出口を抜けた瞬間、

俺たちの目の前に姿を現した。





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