ぬくもりをもう一度
「素敵……」


頬を赤らめながら言う姿が愛しくて、

景色よりも香澄を

じっと見つめ続ける。


ようやく、

ここまでたどり着いたんだ―――


そう思いながら。


それまで繋いでいた手をふっと離す。


そしてそのまま香澄の肩を

ふわりと抱き締めた。


突然のことに、

それまで外を眺めていた香澄が

目を丸くして俺を見つめる。


「亨、くん?」


「今日は、こうしていたいんだ……」


それだけを口にすると、

香澄はふっと微笑んで

こくんと小さく頷いた。





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