ぬくもりをもう一度
言い終わった直後、

香澄の目からひとすじの涙が

こぼれ落ちた。


その涙の意味が分からず、

俺の心がざわつき始める。


プロポーズなんて

まだ早かったのだろうか。


再度付き合い始めたとはいえ、

1ヶ月経つか経たないかで

人生最大の決断をしてしまうのは、

やはり良くなかったのかもしれない。


後悔の念が俺の心を

じわじわと襲ってくる。


「……香澄?」


恐る恐る声をかけると、

香澄が今度はふわりと微笑んで

大きく頷いた。


「ふつつかものですが、

 よろしくお願いします」


その言葉に、

緊張と不安の糸がぷつりと切れ、

香澄をぎゅっと強く抱き締めた。





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