ぬくもりをもう一度
この街に来た最初の頃、

あまりの空気の汚さに

息をするのも

ためらったほどだった。


鮮やかな緑に囲まれた、

空気のひどく澄んだ場所から

この街にやってきたのは、

大学へ進学するためだった。


それまで“都会”という

へんなブランドに

憧れを抱いていた俺は、

志望校を深く考えず

この街の大学に決めてしまった。


実際、この街に来てみて、

ようやく自分の住んでいた街が

どれだけ恵まれていたか、

思い知らされたのだけれど。


でも、そんな

もわんと淀んだ空気にも

慣れてしまうと、

さも自分が

“都会人”になったかのような

気がしてしまうのが、

なんとも情けない。






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