先輩とあたし。

自分の心臓の音は聞こえるはずがないんだけど、なんとなく聞かれたくなくて音楽を余計に大音量にして香山公園の入り口を見つめる。

あと3分前ってところで亮太くんが、香山公園の入り口を通った。

あたしは音楽を止めて、ポケットにしまう。

亮太くんはあたしが座っているベンチの隣に座った。

「どうしたん?」

『うん』

本当はわかってるくせに。

バレンタインの日に呼び出すなんて、チョコを渡すしかないじゃん。

わかってるくせに聞くなんてイジワルだね。

「とりあえず上いこっか」

『うん…』

香山公園は上に遊具、下に広場がある。

今は下の広場のベンチに座っていた。

「親父が帰ってくるから見られたくないんだよね」

『そうなんだ』

確かに、今いるところでは道路から丸見えだ。

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