冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「紘夜!紘夜を追いかけなきゃ…ッ…私、私ーー」

よろけながら、

甘い煙草の香りの方へと走り出そうとすると、


グイ、
と力強い腕が私の体を抱え込んだ。

「待って!実織ちゃんっ、君もケガしてるんだから」


近くで、
吉水さんの叱るような声がした。

でも、

「は、離して…紘夜、紘夜がっーー!」

吉水さんの腕の中で暴れ、

私の視線は、
私の想いは、


樹々の向こうを見据えていた。


紘夜の背を見送った

甘い煙草の香る、



その先へ…。




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