冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
パンッ

乾いた音が響いて、
その瞬間は、よく分からなかった。

でも、

自分の頬が熱くしびれるように痛み、

ハッとなった。



「落ち着いて実織ちゃん。
相変わらず紘の事となると、無茶だね、君は」

柔らかいけど、
いつもと違う厳しさを込めた声が、頭上から聞こえた。


「…吉、水…さん…」

震える声で名を呼ぶけど、
涙で揺れる視界で見上げるけど、


声も視界も、
はっきりとしない。


私は誰の名を呼んでるの?

私は誰の名を呼ぼうとしているの?



私はどこを見てるの?

私はどこを見ようとしているの?




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