冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
嫌な予感と不安ばかりが募って、
気は急いたが、
バイクのエンジンを吹かし、
走り出すと、
よぎる、吉水さんの言葉。
ケータイを切る直前、
『くれぐれも気をつけて来るんだよ。
急いだばかりに、君に何かあったら、
実織ちゃんを哀しませるだけだから』
淡々と話していた口調に、少し厳しさを込めた声で、
吉水さんは、そう言って、
『気をつけて』
さらにそう一言付け加えて、
電話を切った。