冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
白く濁ったような視界の中で、
雫と血の紅い色が滲む様子をぼんやりと眺めていると、
「ーー織っ、実織!」
馴染みのある声がして、
ハッとなった。
「おい、大丈夫か?ケガは?
どこが痛い?」
優しく、
心配する、声。
「……ジュン、兄……」
見上げた、その優しい声の人の名を呼ぶと、
また、
雫が流れ落ちた。
声で分かったはずなのに、
見上げた先に、
紘夜がいなくて、
また大きな雫が零れた。