冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「なに言ってる!ダメだッ、一緒に帰ろう!」

「お願い!お願いジュン兄……」

動こうとしない私の肩を引き寄せ、
明るい表通りに向かおうとするジュン兄の力に逆らう。


「お願い!お願い、ジュン兄」


何度も、

何度も繰り返す、同じ言葉。





その私の何度目かの言葉に、
ジュン兄の溜め息が重なると、

ジュン兄の足取りが明るい表通りではなく、

もとの暗い道を戻るように、
私の肩を支えたまま歩き出した。


「……まったくどこまでも手のかかる妹だ」


視線を合わせず小さく呟くジュン兄。


いつもの、
『甘いンだよ、実織は』

そういうジュン兄の
厳しいけど、愛情を感じる口調で。



「ごめんなさい……ありがとう、ジュン兄」


私は、
深々と頭を下げた。


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