冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
紘夜様のお兄様である、暁弘様。
フォーマルなスーツを着こなす、
綺麗な立ち姿。
お客様と話す端整な顔は、
適度に笑顔をのぞかせ、受け答えする。
いつもの完璧な姿。
でも、
眼鏡の奥の瞳は、
冷ややかに凍っているようにさえ見える。
いつも以上にーー
時折、
睨む様に扉に向けられる微かな視線を、
私は知っていた。
それは、
暁弘様が紘夜様を見る目に似ていた。