春 雷
穏やかな春の陽気に誘われて、歩いて街まで出かけたのが間違いだった


自転車であれば10分ほどの道のりも、歩けば30分近くはかかってしまう


歩き始めてすぐに葡萄の粒ほどの雨がひとつ、またひとつと落ち始めた


ビチャ、

ビチャ、


アスファルトに叩きつけられた大粒の雨が音をたてて弾けていく


とても家まではもちそうにない


私は少しだけ走ることにした


この先に、いまは営業していない古びた駄菓子屋が一軒ある


そこで雨宿りをするためだ

< 2 / 20 >

この作品をシェア

pagetop