青空バスケ―番外編―
「……岬」
「何……?」
「……大和は……今日、誰からも何も貰ってないっぽいよ」
「……え?」
蓮ちゃんの言葉にあたしは驚く。
だって、毎年少なくとも2、3個はクラスの子から貰ってるし……今日だってクラス全員に配ってる女の子もいた。
……それに、あの子も……。
……あたしは今日昼休みに来たあの女の子の姿を思い出す。
「……俺達さ、勝負してるんだよな」
「うん……?」
「バスケ部の高一で。
誰が一番多く貰えるかって」
「そうなんだ」
確かクラスの男子もそんなことやってた気がする。
「でも、このままじゃアイツ、誰からも貰えないまま最下位になっちゃうからさ……」
だから……と蓮ちゃんは続ける。
「岬がアイツに恵んであげてよ」
喜ぶよ、きっと……と蓮ちゃんは言ってくれる。
「……でも……」
……それでもあたしは少し躊躇う。
「……待ってるよ、大和は」
「……うん」
……あたしは蓮ちゃんに背中を押されるようにして、部室へ向けて一歩足を踏み出した。