戦慄フォルテシモ
『尚坊っちゃま、お帰りなさいませ』
家に帰るといつもの出迎え
楽しくもないのにニコニコと笑う大人達には慣れてきた
『今日は迎えの車に乗らなかったそうですね。会長の言い付けですので明日からはきちんと乗って下さいね』
こいつは俺が小さい頃から居る古株(ふるかぶ)の使用人
年寄りのせいか何かと口うるさく言ってくる
全部親父の指示だろうけど、こんな俺に仕えて何の意味がある訳?
将来に期待してるんだろうけど、俺は親父と同じ道には行かない
『………おい、お前音楽やった事あるか?』
俺の荷物を持ち、後ろから付いてくる使用人に聞いた
『音楽ですか?クラシック音楽なら多少たしなみますが』
話にならねーよ
----------バタンッ。
俺は自分の部屋に入り、ベッドに倒れこんだ
まだ鼓動がドキドキしている
あの胸が踊る感覚、あのメロディが耳から離れない
それと同時にイライラして仕方がない
多分これは嫉妬だ
金や力を使っても真似出来ないもの、それをあいつらは持ってる
特にあの女顔の亮って奴
あいつの歌を聞いた時鳥肌が立った
こんなの人生で初めてだ