戦慄フォルテシモ
最初はそれがうっとうしくて仕方がなかった
ひどい言葉で罵ったりもしたけど、高瀬はめげずに寄ってきた
周りからは分け隔(へだ)てなく接する良い人に見えたかもしれないけど、
俺にはただの偽善者に見えていた
『つーかスカート短くね?眼鏡も外して高校デビューかよ』
俺はいつもそんな高瀬に冷たい態度をとってしまう
『そんなつもりはないけど……。変かな?』
冗談さえまともに受けとる面白みのない女
『うさぎ目になってるし。コンタクト合ってねーんじゃね?』
中学の頃は眼鏡をかけて、スカートだって長かったくせに
高校に入った途端、急に変わりやがった
『似合ってない』
俺がそう言うと高瀬は
『私だっておしゃれぐらいしたっていいでしょ』とふてくされる
何かが気にくわない
俺の苛立ちは中学校の延長戦
友達と下らない話で盛り上がってる奴ら
周りを気にしないバカップル
朝から晩まで汗を流す部活一筋の連中
みんな何を必死に頑張って得ようとしてるんだろ?
俺は何もしてないのになんでも持ってる
自分から手を伸ばしてまで欲しいものが存在しない