戦慄フォルテシモ





次の日の朝は送りの車を振りほどけず、渋々乗って行く事になった



『最近は物騒ですので。尚坊っちゃまに何かあったら大変です』


運転手は言う事の聞かない俺に苦笑いを浮かべている


『は?物騒?子供じゃねーんだ。何かあっても自分でなんとかするよ』




俺は特別なんかじゃない


外で歩いている学生達と同じだ



『何かあってからでは遅いのです。会長にしっかり尚坊っちゃまも送り迎えするよう言われていますので』



-----------なんだ。親父の為か。


親父の言い付けを守らなかったらクビ、逆らったらクビ、俺に何かあったらクビ


結局怯えてんのは親父じゃなくて、親父の権力だろ


朝から胸くそ悪い気分になってる中、信号待ちをしている高瀬が見えた




『おい、ここで下ろせ。後は歩いて行く』


『え、でも………』



なかなかブレーキを踏まない運転手を俺は睨み付けた


『親父以外にも俺がクビだと言えば多分そうなるよ。今は俺の言う事を聞いた方がいいんじゃねーの?』



そう言った瞬間、車がピタリと止まった


権力なんて一番嫌いな言葉なのに、それを振りかざす事しか出来ない自分に嫌気がさす




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