戦慄フォルテシモ
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『楽しみだね。亮達の演奏』
高瀬が帰り道、ウキウキした様子で言った
店長にはダメだと言われたが、高瀬がわがままを言って俺達も夜のライブハウスに行っていい事になった
だけど服装が制服だとまずいと言う事で、一旦家に帰る事に
勿論、亮や鉄も
『私ね、ずっとあのメロディが頭から離れなかったの。だからまた聞けるなんて本当に嬉しい』
高瀬は特別、音楽に感心がある訳じゃない
そう思うのはきっとあいつらの曲だからだ
俺は家に着いて、着ていく洋服を適当に選んだ
悔しいけど、どこか高瀬と同じように胸が高鳴っている
あの空間、あの空気、あのメロディ、あの歌がもう一度聞けるんだ
----------と、その時
ベッドの上に無造作に置いた携帯がバイブしていた
手に取ると、着信表示は【親父】
一気に夢から覚めた気がして、俺は不機嫌に電話に出た
『………なに?』
親父は用件がなければ電話なんてかけてこない
『葵から聞いたか?大学の事』
---------は?大学の事?
兄貴は親父以上に俺に連絡して来ない
昔から波長がなに一つ合う事がない名前だけの兄弟だから
『いや、聞いてないけど何?』
良い事なんてあるはずがない。親父の用件はいつも俺の気持ちを逆撫(さかな)でする