戦慄フォルテシモ
『お前も2年後には葵と同じ大学に行くだろ?その話をしたら顔馴染みの講師が大学内を案内してくれるそうだ』
『………』
『今から色んな人に顔を覚えてもらうといい。来週の土曜日なんだが……』
--------ほらな。いつもいつも親父の用件は俺をイラつかせる
俺はいつも親父の計画通りに行動して、用件の内容も相談ではなく決定だ
『………俺は行かねーよ』
親父の希望通りに動くのは兄貴だけでいい。跡継ぎは一人居れば十分だ
『土曜日に何か予定があるのか?だったら別の日に……』
『大学には行かない。俺の将来を勝手に決めるのは止めてくれ』
俺はそう言って電話を切った
電話の向こう側で親父がため息を付いている顔が目に浮かぶ
だけど、それだけだ
こんな風に言ったって、親父はなんとかなると思ってる
気の迷い、反抗期、たわごと
俺の意見なんてそんな言葉で片付けてしまうんだ
俺は苛立ちを抑え、再びサンセットに向かった
あいつらが演奏するのは7時過ぎ
あの胸が踊るような世界へもう一度-------------。