戦慄フォルテシモ
サンセットに着くと、昼間の雰囲気とは違って店内は薄暗くなっていた
テーブルや椅子は勿論片付けられ、ステージには演奏で使う機材が置かれている
客層はさまざまだったけど、中にはがらの悪そうな連中も居た
『あ、尚。良かった。なんかこの雰囲気に圧倒されちゃって』
高瀬は俺を見るなり安堵の表情を浮かべた
確かに高瀬みたいに真面目な女は店内に一人も居ない
ステージではもう音楽が始まっていて、爆音が耳に響いてきた
ロックなのかパンクなのか知らないけど、音楽って言うよりただ叫んでるだけ
やっぱりあいつらの曲じゃないと何も感じねぇ
『彩ちゃん。尚。何か飲むか?』
爆音の中、店長が俺達を見つけて声をかけてくれた
『じゃぁ、オレンジジュースお願いします』
そんな高瀬を横目に俺はキョロキョロと周りを見渡していた
天井に取り付けられたミラーボール、音楽に歓声を送る客達
これが俺の知らなかった世界
『まぁ、楽しんでいけよ』
店長は意味深にそう言って、カウンターの中に入って行った
-----------きっと店長は気付いている。
俺の好奇心がただの興味本意だけじゃない事に