戦慄フォルテシモ






『尚坊っちゃま。今日は会長が家に帰って来ますので夜は家に居て下さいね』



頼んでもいない学校の送り迎え

黒い車はピカピカに磨かれていて、専属の運転手が運転している


車種名なんて知らないけど通行人がジロジロ見るから、多分高級車なんだと思う


親しくもない人間の車に乗って勝手に坊っちゃまなんて呼んできて

きっと俺にとっての普通は普通じゃない




『葵坊っちゃまも帰省なさるそうで。久しぶりに親子水入らずで夕食ですよ』



--------ちっ。


俺はサイドミラーから見える運転手の作り笑いを睨み付けた




俺の家は都内の高級住宅地にある

庭は庭師が居る程でかいけど、どのくらいの広さなのかは知らない


生まれた時から周りに沢山の大人が居て、どいつもこいつも嘘くさかった


ガキの俺に対しても腰は低くて、身の回りの事は全てやってくれる



親父は大手IT企業の会長で海外にも本社があるトップ会社


まぁ、親父の親父、つまりじいちゃんの作った会社を親父が継いで今に至るから


親父が成功者という訳じゃない


親父は海外の本社で仕事をしているから日本には滅多に居なくて


一年に一度、親子ごっこの夕食会が開かれる





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