戦慄フォルテシモ







『葵、大学の方は順調か?』


息苦しい大理石のテーブルに向かい合う父と子


俺の隣に座る兄貴は昔から親父の前だけはいい子を演じる奴だった



『順調だよ。父さん。むしろ大学で習う経済はあまり面白くなくて…。早く卒業して父さんの会社で色々学びたいよ』




---------------吐き気がする。

このオリーブオイルたっぷりの魚のせいか


いや、この家も親父も兄貴も他人以上にやっかいな関係だからだ



『尚。高校に入って少しは落ち着いたか?もう中学みたいに問題ばかり起こしてくれるなよ』



親父はいつからこんなキラキラした貴金属をするようになったんだ?


一年に一度しか帰ってこないくせに親父面してんじゃねーよ



『大丈夫だよ。尚だってもう子供じゃないんだし、父さんが居ない間は僕がしっかり見ておくから』


『はは、そうか。お前には期待してるからな。これからも頑張りなさい』



気にくわない

気にくわない

気にくわない


親父の笑い声も兄貴が演じる茶番な演技にも


俺は目の前の分厚いステーキをフォークでグサリと刺した





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