戦慄フォルテシモ







それから暫くして俺は親父に呼び出された

親父から連絡が来る事は滅多にないし、用件はなんとなく想像がつく



向かった場所は都内にある本社ビル


気持ち悪くなるほど長いエレベーターの一番上に親父は居る。どうせまたすぐ海外に飛ぶんだろうけど



親父が俺と話す事はただのついでで、その為に日本に帰ってきた訳じゃない


俺はピカピカの高そうな扉の前に着き、そのドアノブに手をかけた



音のしない扉はスーッと開き、そこにはガラス張りの部屋に囲まれ会長の椅子に座る親父が居た




『話ってなに?どうせゆっくり話してる時間なんてないんだろ?』




俺はいつも親父の目を見ない


小さい時から向き合って喋る事は数えるぐらいしかなかったから




『最近音楽をやってるらしいな。そのせいで帰りも遅いとか』



親父はいつも見えない所で俺を監視している

親父の言いなりになる大人は山ほど居るから



『やってるよ。帰りが遅いのは練習してるからだ。当たり前だろ?』


体の倍近くある大きな椅子に座り続けている親父は呆れた顔をしている





『趣味はほどほどにしろ。音楽なんて将来何も役に立たない』




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