赤い月 肆

だが一抹のモヤモヤを抱えながらも、脳内スプリング満喫中。

今日も放課後お買い物デート満喫中。

真っ白で殺風景だった景時の部屋に、赤の差し色が増えた。

白いソファーの上に乗った、赤いうさぎ専用クッション。

寝室に置かれた、引き出しの赤いうさぎ専用チェスト。

うさぎ専用マグカップ。
うさぎ専用タオル。
うさぎ専用スリッパ。
うさぎ専用‥‥‥

うさぎがやって来た当初は『いらぬ』の一言で折れていたが、もう折れない。

無理矢理でも買う。

だって、うさぎはもう居候じゃない。

あの部屋はうさぎの家。
うさぎの帰る場所だから。

もっと、帰りたくなるように。
もっともっと、離れ難くなるように。

いっそ、ずっと、いてくれるように。


「今日は何を買うのじゃ?」


「今日はね、うさちゃんの傘。
もうすぐ梅雨だし。
あ、小さめのドレッサーなんかも見よっかー。」


「傘など、いつもの透明ので…
‥‥‥いや、何もない。」

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