赤い月 肆
「ナニ笑ってるの?
景時くん、変なの。
ね? 上がって?
私、風邪ひいちゃう。」
深雪が景時の腕に手をかける。
景時はそっとその手をほどかせ、代わりにナニカを握らせた。
「コレ…」
「返す。」
それは、鍵。
二人の逢瀬の場所だった、深雪の部屋の鍵。
「上がらないし、もう来ない。
俺たち、本当はずいぶん前に終わってたケド、ちゃんと終わろ?」
「…
どーしてそんなコト言うの?
バレなきゃイイじゃない。」
「そーゆー問題じゃなく」
景時の言葉を遮るように、深雪がバスタオルを落とした。
露になる、火照った豊満な身体。
何度も何度も愛した身体…
景時は顔を伏せ、自分の足元に視線を落とした。