赤い月 肆
重いのは 俺か
踏み荒らされたぬかるみのような、ドロドロの追憶に沈む景時を眺めていた祥子が、派手な音を立ててコーヒーカップを置いて舌打ちした。
客や店員が驚いて振り返る。
だが鬼の形相を見せる金髪巻髪ギャルから、慌てて目を逸らした。
「辛気臭ェンだよ。
『行くな』って言えばイイじゃん!
このヘタレ!!」
うわ、酷…
言い返せねぇケド。
てか、顔コワいよ?
みんな引いてるよ?
や、その話を今思い出してて…って、意識飛ばしてたケド、ココ、ドーナツ屋だったわ。
気づけばさらにドーナツが3個追加され、景時の皿は溢れかえっている。
なんだかんだ言って、本当に心優しい友人たち。