赤い月 肆

「見て。」


「…」


「見てよ。」


ゆっくり視線を上げる。
爪先から順に、舐め上げるように。

深雪は両手を広げて、景時を誘っていた。


「欲しいでショ?
私も欲しい。
どんなコトしてもイイ。
どんなコトでもしてあげる。
だから」


「深雪さん…
ごめんね?」


情欲の炎を灯した深雪の瞳に映った景時は、困ったように、悲しそうに、微笑んでいた。


(どうして…)


女がここまで身を投げ出しているのに…

熱を感じない。
欲を感じない。
愛がないのはわかってたけど。

深雪は青ざめ、唇を噛んだ。


「…
そんなに、あのコが好き?」


「うん。」


「心が欲しいなんて言わない。
身体だけでも、ダメ?」


「うん。
心も身体も、うさぎじゃないとダメなんだ。」

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