赤い月 肆

(うさちゃん、遅い…)


景時は教室の入り口に視線を移した。

さっきの授業は体育。

景時は例によって教室で寝ていたのだが、女子は体育館でバスケをしていたはずだ。

ほとんどの生徒が着替えを終えて教室に戻っているにも関わらず、うさぎの姿は見えない。

そういえば、祥子と小鞠も見当たらない。

もうすぐ、シメのホームルームも始まるというのに…


「ねぇ、ねぇ。
うさぎ知らない?」


景時は席の近くを通ったクラスメートに声をかけた。


「祥子が体育館に忘れ物したとかで、一緒に取りに行ってたよー。」


「そっかぁ。
ありがと。」


景時がヘラっと笑いながらお礼を言って、安堵の溜め息を漏らすと、斜め前辺りから含み笑いが聞こえた。

さっきまで机に突っ伏して、鼾をかいていた薫だ。

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