赤い月 肆
(祥子ちゃんと小鞠ちゃんが…)
鬼気の大きさ的に、この程度のオニならうさぎと一緒にいれば無事だろう。
普通なら。
でも、このオニは普通じゃない気がする。
近づいてくる気配を、まるで感じなかった。
急に産まれ出たような…
まさか、三体まとめて?
急に降って湧いたような…
いったいドコから?
ナニカがオカシイ。
急いで状況を確認し、保護しなければ。
中庭を駆け抜け、雨に濡れた前髪を掻き上げた時、景時の視界の端に誰かが映った。
大きめの包みを胸に抱え、従業員用の通用門の方向に走り去る…
「アレ、前の女じゃねーの?」
「‥‥‥‥‥」
全力疾走しているにも関わらず、息も乱さぬ落ち着いた声で問う薫に、景時は何も答えられなかった。
いつものように、ピンヒールじゃなかった。
いつものように、女をアピールした格好じゃなかった。
いつものように、茶色に染めたセミロングの髪を結い上げてなかった。