赤い月 肆

(祥子ちゃんと小鞠ちゃんが…)


鬼気の大きさ的に、この程度のオニならうさぎと一緒にいれば無事だろう。

普通なら。

でも、このオニは普通じゃない気がする。

近づいてくる気配を、まるで感じなかった。

急に産まれ出たような…
まさか、三体まとめて?

急に降って湧いたような…
いったいドコから?

ナニカがオカシイ。

急いで状況を確認し、保護しなければ。

中庭を駆け抜け、雨に濡れた前髪を掻き上げた時、景時の視界の端に誰かが映った。

大きめの包みを胸に抱え、従業員用の通用門の方向に走り去る…


「アレ、前の女じゃねーの?」


「‥‥‥‥‥」


全力疾走しているにも関わらず、息も乱さぬ落ち着いた声で問う薫に、景時は何も答えられなかった。

いつものように、ピンヒールじゃなかった。

いつものように、女をアピールした格好じゃなかった。

いつものように、茶色に染めたセミロングの髪を結い上げてなかった。

< 131 / 265 >

この作品をシェア

pagetop