赤い月 肆
目を鋭く細めたうさぎが、素早く祥子を振り返った。
そのまま、手にしていたボールを投げつける。
「ガッ!!」
祥子のキレイに巻かれた金髪を翻らせて一直線に飛んだボールは、彼女の背後に迫っていたナニカを弾き飛ばした。
「え… 姐…
『が』?
‥‥‥‥‥は?」
振り向いた祥子が硬直する。
振り向いた小鞠が息を飲む。
黒と灰色が絶妙に混ざり合う、巨大で歪な体躯。
幾人もの肉を抉ったであろう、硬く尖った爪。
鋭い牙がビッシリ並ぶ大きく裂けた口からは、唾液と共に血臭と死臭を撒き散らす。
頭部には、骨を無理矢理中から盛り上げたような醜い突起物… 角。
「‥‥‥オニ…」
青ざめた小鞠が小さく呟いた。