赤い月 肆
うさぎは瞬時に現状を把握した。
オニは三体。
こちらは体育館の隅に追い詰められている。
すぐそこに見える通風用の小さな窓は開いているようだが、格子が嵌まっている。
一体は未だ舞台のほうに転がっているが、後のニ体が体育館の扉までの経路を塞ぐように立ちはだかっている…
「鞠を。」
オニから視線を逸らすことなく、うさぎが低い声で言った。
即座にうさぎの意図を理解した小鞠が、体育用具室のカゴにあったバスケットボールを彼女に手渡す。
「ゥガァ!」
「ガガッ!」
うさぎの手から電光石火で放たれたボールがニ体のオニにヒットし、体勢を崩させた。
「逃げろ。」
有無を云わさぬ鋭い声に反応し、小鞠が弾かれたように扉に駆ける。
だが…