赤い月 肆
(痛…
夢、じゃない。)
上半身を起こそうとした祥子の頬に、温かいモノが降ってきた。
無意識にそこを擦った指を見る。
赤い‥‥‥‥‥血?
完全に正気に戻った祥子が仰ぎ見ると、うさぎが自分に覆い被さっていた。
「起きたようじゃな。」
苦笑するうさぎの細い腕を伝う鮮血。
白いブラウスの肩が、みるみる赤く染まって…
「姐御!!!」
『走れ、祥子
扉じゃ』
身を起こし、祥子を庇うようにオニの前に立ち塞がったうさぎが、呪を呟く。
意思とは無関係に走り出した自分に驚きながら、祥子は首を捻って背後を見た。
(あ…)
リボンをほどいて襟元のボタンをはずすうさぎの髪が、色と長さを変えていく。
目映い光を放つ、銀。
祥子は文化祭で見たうさぎを思い出していた。
(コスプレじゃない…)