赤い月 肆
ガチャン! ガチャン!
祥子が前に視線を戻すと、小鞠が派手な音を立てて扉と格闘していた。
「開かないの!!」
「退いて!!」
涙目の小鞠が下がるのを確認して、祥子は力任せに扉に蹴りを入れた。
数cmは開く。
つまり、鍵は開いている。
二人がかりで体当たりしてみるが、それ以上扉は動かない。
きっと、外側にナニカ…
「姐御!
閉じ込められた!!」
悲壮感に苛まれ後ろを振り返った祥子と小鞠は、一瞬、自らが置かれている状況を忘れた。
オニの肩に乗ったうさぎが、その首を捩切っていた。
前のめりに倒れ込む巨体の背を蹴って身を捻り、手から青い炎を放つ。
炎に包まれて断末魔を上げるオニを背景に、うさぎは華麗に床に降り立った。
目の前で起こっているのは、きっと惨劇。
なのに、優雅な舞を見ているよう…
銀の髪と赤い瞳、二本の角を持つ禍々しくも神々しい舞姫は、床を軽く蹴って口を開けたまま見惚れる二人に向かって飛んだ。