赤い月 肆

瞬く間に近づいたうさぎの白い手が触れただけで、外からナニカで固定されていた扉が、強固な蝶番ごと吹き飛んだ。


「ゆけ。」


うさぎは二人を見ることなく、すぐさままだ残るニ体のオニに鋭い視線を向けた。

が、ピクリと身体を揺らす。

細い手首が、震える両手で握られていた。


「姐御、も、一緒に。」


見開かれた赤い瞳が、必死の形相を浮かべて震える祥子を映した。

厳しく引き結ばれていた、うさぎの紅い唇が綻ぶ。


「妾は鬼。
心配は無用じゃ。」


「え…」


「大丈夫かっ?!」


小柄な初老の男が、声を上げて体育館に駆け寄ってきた。


「そなた… 僧じゃな?」


「はい。」

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