赤い月 肆

歪んで転がった体育館の扉を見ても、変化を解いたうさぎの赤い瞳に見据えられても、動じることのないその男…元・オニ狩り僧、現・慈愛学園用務員の氷室が、姿勢を正して頷いた。

その返事を聞いた途端、うさぎが祥子と小鞠を外に突き飛ばした。


「姐御?!」


「うさぎちゃん!!」


二人は手を伸ばしたが、うさぎが壊れた扉の代わりのように灯した青い炎に阻まれる。


「その者らを頼む。
この建物に結界を。
ここは任せろ。」


「はっ!!」


命令することに慣れた口調。
静かだが威厳に溢れた声。

反論など許さぬと言わんばかりに、氷室の神妙な返答を待つことなく、うさぎの姿は扉の前から消えた。

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