赤い月 肆
「違… ケガ…」
「あ。」
横たわる死体の呟きを聞いた祥子が、手を口元に当てて目を丸くするうさぎを振り返った。
「な… 何事じゃ?」
「姐御!! ケガは?!」
祥子がうさぎのブラウスをひっ掴み、景時よりも遠慮なく白い肌を晒けさせる。
ようやく体育館に足を踏み入れた薫と小鞠が、再び慌てて目を背けた。
「ケガ‥‥‥ あれ?」
「心配は無用と言うたであろう?」
肩を凝視する祥子に、うさぎは困ったように微笑んだ。
さっきは確かに流れ落ちるほどの血を溢れさせていた傷が、塞がっている。
いや、消えかけている。
肩から鎖骨の下にかけて、五本の細く赤い筋が走っているだけ…
「妾は鬼じゃ。
この程度の傷など、直ぐに治る。」