赤い月 肆
「…
でも、この血は本物でショ?
本物の、姐御の血でショ?」
朱に染まったブラウスを握る手が震えている。
嗄れた声を絞り出した祥子が、ルビーのように輝く瞳を覗き込んだ。
「ごめん。
私がボケっとしてたから…
…ごめん…」
「謝る必要はない。
そなたは悪くない。」
目を潤ませだした祥子の頭を、うさぎの白い手が優しく撫でた。
「でも…」
「そなたと小鞠が無事であれば、それで良い。
笑え。
若い娘に泣かれるのは、苦手じゃ。」
笑えと言われたにも関わらず、祥子の目にみるみる涙が溜まり、溢れ出す。
小さな手を胸の前で組んだ小鞠も、口をへの字に曲げて震えだした。
(ぅわ。
コレ、前にもあった。)
忌まわしい記憶を蘇らせた景時が上半身を起こしたが、時既に遅し‥‥‥