赤い月 肆
小鞠が、つけ睫毛が片方取れかけた祥子を指差して、泣き笑いしている。
祥子は小鞠に拳を振り上げて、怒りながら笑っている。
うさぎも‥‥‥
(笑ってる…)
乱れた銀の髪を掻き上げて。
白い頬を紅潮させて。
赤い瞳が見えないくらい、目を細めて。
鬼は人に囲まれて笑っていた。
(太陽みたい…)
美しい。
眩しい。
暖かい。
景時は体育館の床に座り込んだまま、笑う彼女を見つめ続けた。
月の光を集めて創ったような人だと思っていた。
冷たく、静かに、だけど優しく微笑む人だと思っていた。
だけど、きっと、違うんだ。
『死んだ』という、彼女が失った彼女は、お日さまのような人なんだろう。
世界を照らす、陽の光。
守らなければならない。
今度こそ。
世界は失ってはならない。
女神の笑顔を。