赤い月 肆
「…」
唇を噛んだ景時が視線を感じて顔を上げると、薫の真剣な眼差しにぶつかった。
(…わかってる。)
一瞬迷うように睫毛を伏せた景時だったが、再び薫を見て軽く頷いた。
直ぐに治るとはいえ、うさぎの血が流れた。
うさぎがいなければ、祥子と小鞠は喰い殺されていた。
見なかったことにはできない。
ハッキリさせなきゃ…
「そろそろ帰ンぞ。
桜木は俺が送ってく。
大吾は前田頼むわ。」
薫が立ち上がった。
景時の口から、うさぎと秋時に報告しろという意図だろう。
「えー? もーちょっとー。」
「俺、まだ大丈夫ー。」
「コラコラ。
先生の前で夜遊びすンのは、さすがにマズいでショー?」
ゴネる三人に、ナニカあることに気づいた秋時が柔らかくお開きを促す。
理事長先生に言われちゃ、ね。
グズりながらも、三人は帰って行った。
最後に、うさぎのコトは誰にも言わないから、と約束してくれた。