赤い月 肆

「そなたが曾て一度は愛した者は、そのような事が出来る娘であったか?」


(ほーら、きた。)


景時は顔を顰め、奥歯を噛みしめた。

考えないようにしてたのに。

私情を捨てて。
感情を無にして。
慕情を圧し殺して。

確証だけを追おうとしてたのに。

そのほうが、楽なのに…

うさぎの瞳は、それを許してくれない。

哀しみを湛えた、暗く翳る深い赤。

目を逸らすことはおろか、瞬きもできない。

心を全て晒すまで。


「…
深雪さんは、そんなコト出来るヒトじゃない。」


低く呻くとうさぎの口元が薄く綻び、赤い呪縛から解放される。

だが、髪を片手で掻き上げながら深く息を吐いた景時を、次の呪縛が襲った。


(??!!////////??!!)


呪縛ってか…

即死魔法デスカ?

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