赤い月 肆

景時は勢いよくベランダ側の窓を振り返った。


(やっぱりか。)


肩を落として天井を仰ぐ。

自分に寄りかかるうさぎの目を見て、彼女の視線の先にあるモノに気づいてしまった。

しっかり閉めきれていないカーテンの隙間から覗く、厚い雲をすり抜けた今にも折れそうな三日月。

このシチュエーションでうさぎ持ってかれるとか、俺、情けなさすぎ。

カーテンは空気読めなすぎ。

月は遠慮なさすぎ。

呪ってやる。
爆発しろ爆発しろ爆発しろ…


「何があっても、何を知っても、そなただけは最後まで信じてやるが良い。
そなたが愛したあの娘の心を。
そなたが愛したままの姿を。」


「…」


あ。
なんかちょっと、ホっとした。

この『そなた』は、俺だ。

あの三日月のように消えそうだけど。

消えそうに儚いけど。

うさぎのぬくもりは、確かにここにあって。

微かな声は俺を呼んでいて。

心も… ここにあるんだろう?

乾ききった、哀しい瞳をしていても…

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