赤い月 肆

景時はうさぎの肩を握る手に、力を込めた。


「景時。
妾はそなたが信じる者を、共に信じよう。」


「…
ありがとう…」


君はわかっているのかな。

自分の命が狙われたかも知れないのに、自分の命を狙ったかも知れない深雪さんの心配ばかりしてるコト。

状況的には限りなく黒なのに、深雪さんを疑いきれない俺を救ったコト。

君はわかってないのかな。

他人にばかり優しくして、自分を大事にしていないコト。

誰かのために微笑んでばかりで、自分のために涙を流せていないコト。

いつか、君の哀しみを吐き出させてあげたい。

いつか、君を救ってあげたい。

いつか、君が涙を流せる場所になりたい。

傍にいて?

傍にいるから。

あの月よりも、君の近くに。

< 169 / 265 >

この作品をシェア

pagetop