赤い月 肆
イイコト教えてやろーか
オニの襲撃があってから、二週間が経った。
あれ以来、学園に異常はない。
警戒態勢が敷かれたためか、本当にただの偶然だったのか、それとも他に理由があるのか…
その辺は謎に包まれたまま。
必死の捜索にも関わらず、深雪は完全に消息を絶っていた。
秋時の顔利きで確認したところ、パスポートを使った痕跡はないようだ。
姿を消す。
それだけでも疑いは濃厚。
その上、秋時から上がってきた彼女の報告書ときたら…
「薫ちゃーん?
ガリガリくん溶けてるよー?」
初夏の陽射しに肌を焼きながら、景時は例の報告書を読みふける薫に声をかけた。
(…
聞いちゃいねぇよ。)
授業時間真っ只中の屋上。
柵を背もたれ代わりに座り込んだ景時は、青い空を見上げて溜め息を吐いた。