赤い月 肆
そーいや、去年もココでこうして溜め息を吐いていた。
あれは夏休み中だったから、時期的にはもうちょい先か。
うさぎに出逢って。
うさぎに恋をして。
どーすりゃイイのかもわからなくて…
思えば、結構な無茶をしてうさぎを取っ捕まえたモンだ。
よくあんなコト出来たな、俺。
だって相手は鬼神サマだよ?
まぁ、おかげでうさぎは今も傍にいてくれてるワケだから、結果オーライ。
あん時の俺、グッジョブ!
「…
オメェ、コレ、うさぎサマは読んだンか?」
だらしなく顔を緩ませて回想に浸る景時を、隣で胡座をかいた薫の声が呼び戻した。
ヤベぇ、ヤベぇ。
完全に現実逃避してたわ。
「見せたよー。
『随分寂しい娘なのじゃな』
だってさ。」
「…あの人、ドコまでお人好しなンだ?
てか、バカなンか?」
薫は呆れて首を左右に振った。