赤い月 肆
「バカ… なんだろーなー。
コレ読む限り。」
景時は赤い髪を掻き上げたその手で、そのまま左耳に光るルビーのピアスに触れた。
うさぎは深雪を信じている。
たった一度、会っただけ。
まともに話したことすらないのに。
この死者の数は異常だ。
誰かの意図と、何らかの力が働いたとしか思えない。
そしてあり得ない事故も、オニを使えるならばあり得る。
深雪には絶対ナニカある。
報告書を読めば、一目瞭然だ。
それでも…
信じている。
なぜ?
深雪が、景時が曾て愛した女だから。
景時が、深雪を信じると言ったから。
ただ、それだけの理由で。
「うさちゃんって、まじスゲぇよなー。
コレ読んで、俺のほうが心折れそーになったってのに…
うさちゃんって…
うさちゃんうさちゃん…」
(おいおい?
また病みそう?)
項垂れて赤い頭をクシャクシャに掻きむしる景時を、薫は不安そうに横目で見た。