赤い月 肆

景時は出し抜けに、隣に座る薫の襟首を片手で掴んだ。

重量差をものともしない強い力で引き寄せ、男同士の鼻先までの距離、わずか5㎝。


「…
ソレ、どーゆー意味なの?」


「落ち着け。
離れろ。
まじで勘弁して。」


この距離はナイだろ。

薫がなんとか離れようともがくが、景時は掴んだ手を放さない。


「ソレって…
うさぎが深雪さんを信じてるのは…
いやいや、自惚れンな、俺。
でも…
いやいやいや…
じゃ、どーゆー意味なの?
知ってンの?
ねぇ、ナニを知ってンの?」


「し知りマセン。
ソレしか知りマセン。」


(失敗した─────!!)


薫は景時にガクガク揺さぶられながら、恐怖に戦いた。

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