赤い月 肆

景時は一人になったリビングで、ポストから取ってきた広告やダイレクトメールに目を通した。

む。

パン屋がオープンしたってよ。

流行るとイイね。
ソーデスネ。

よし、その調子!
落ち着け、俺!

パン屋のオヤジも、きっと応援してンぞ!

聞き方には気をつけなくちゃ。

『俺のコト、好き?』
『無論(即答)』

コレじゃダメだ。

真意がわからない。

『俺は君のなんなの?』
『ストーカー(即答)』

コレはもっとダメ。

その通りとも言えるが、他の回答をクダサイ。

今までになかった聞き方で…

うさちゃんは空気を読めない人だから、ストレートに…

景時の指が、A4サイズの茶封筒に触れた。

宛名も、差出人の記載もない、厚くて固くて思いの外重みのあるその封筒を、景時は無造作に破いていく。

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