赤い月 肆
「…この呪は…感染…
そなたにまで…」
苦しげにうさぎが喘いだ。
(俺は‥‥‥‥‥)
ナニやってンだ。
うさぎの命が狙われてるって、わかってたはずなのに。
それ以前に、普段ならこんなアヤシイ投函物を迂闊に開けたりしないのに。
浮かれて、はしゃいで、調子に乗って…
ナニやってンだ。
ナニやってンだ。
ナニやってンだ!!!
フローリングに銀の髪を広げて蹲るうさぎを見下ろして、よろける躰を支えようとテーブルに手を着くと、指先にさっき破いた封筒が触れた。
茶色い紙屑の中の、白いメモ。
誘うように書かれた住所。
その字は紛れもなく…
「深雪‥‥‥」
景時は噛み締めた奥歯の隙間から、低く呻いた。
茫然としている場合ではない。
悔いるのも後でいい。
やるコトがあンだろ?
うさぎは死なせない。