赤い月 肆
「違… 景時…」
景時の言葉を聞き逃さなかったうさぎが、力なく彼を見上げた。
メモを掌に収めて拳を握りしめた景時の蒼白な顔は、まるでデスマスク。
昏い焔を灯した瞳は、まるで狂人。
(そんなそなたは、見とうない…)
うさぎは色を失っていく唇を震わせ、微かに首を振った。
「景時… 聞いてくれ…
そなた…は、勘違いを…」
「うさぎ、待ってろ。
今すぐ術者を殺ってくる。」
「待て…
待ってくれ…
景時、景時…」
手を伸ばして、必死にナニカを訴えようとするうさぎを振り返ることなく、景時は部屋を出る。
抱きしめたい。
謝りたい。
一緒に苦しみたい。
でも、その前に…
呪は既に発動したようだ。
だが術者が命を落とせば、無効化できるはず。
一刻も早く、うさぎを救う。
一刻も早く、術者を殺る。
一刻も早く、深雪を‥‥‥
ごめんね、うさぎ。
俺がバカだった。