赤い月 肆
空はもう黄昏。
急がなければ。
ここまでの途上で妨害にあい、ずいぶん時間をロスしてしまった。
最初は深雪の仕業かと思ったが、見知った顔を発見して考えを改めた。
あれは同僚の僧だ。
それだけなら撒くのは簡単なはずなのだが、目的地を知っているかの如く進行方向に現れる。
行動を予測されている。
指揮をとっているのは、間違いなく秋時だ。
危険を感じ取った薫が、景時の身を案じて連絡したのだろう。
心配してくれるのはありがたい。
だが今は、安全を考慮した作戦を練っている場合じゃない。
景時は普段休眠しがちな頭脳とバイクの操作テクを総動員し、追跡を完全に振り切って、やっとここに辿り着いた。
(もうすぐだから。
うさぎ… 無事でいて…)